DAYS

愚怒羅 優人は裏川や青下のクラスメイトだ。
授業は暇で仕方ないので今日もポケモンを厳選していた。
優人はそれなりに優等生だったので
授業の内容は完璧に覚えていた。
今日は山崎先生に「成績上げるから」と
無理矢理頼まれてトリパで使うらしい
ドータクンの厳選をしていた。
正直面倒だが成績のためなので仕方ない。
今日中にやれば物凄く上げてくれるというので
授業中も必死に厳選をする。

優人はこんなんなのでやはりポケモンが強く、
周りのみんなにも慕われている。
フェンシング部の友達に頼まれて
他校の生徒のボコボコにしたこともある。
優人は山崎先生が部員がたった一人しかいない
フェンシング部の顧問をしている事を
思い出してちょっと笑ってしまった。
たまにフェンシング部が利用している体育館から
「ランス!ガンランス!」「くえーっくえっくえっ」
などと聞こえてくるが、優人は気のせいだと思うようにしている。

そんな優人は雨乞い部所属であり、
全国大会を目指して頑張っている。
目標は自在に雨を降らせるコトが出来るという
海王我先輩である。
前大会でこの高校初の優勝を成し遂げた
まさに伝説の人物である。
そんなことを考えていたら授業が終わっていた。
今日も急いで雨乞い部に行こう。

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雨乞い部にやっと着いた。来るまでに
「よォゆうとォ!元気かァ?」と誰かに
声をかけられた気がしたが
振り反っても誰もいなかったので多分気のせいだ。
雨乞い部には別のクラスだが仲のいい
我狼 渦太がいた。彼も雨乞い部所属だが
まだ雨を降らせることが出来ない。
「さあ今日も雨乞いの練習しようぜ!」
そうして一日はすぎていった…

次の日は休日。この日は裏川と青下が大学に出かけた日だ。
優人は特にやる事が無かったので散歩に行く事にした。
適当に辺りをぶらついていると
フェンシング部部長の湯手 玉子を見かけた。
湯手とはそれなりに仲良かったので
声をかけてみることにした。
「おい!湯手!おい!」
ちょっと怖めだがこれが優人の基本挨拶だ。
「いひひひひ!何か用?」
「いひひ頂きましたー」
いつも大体こんな会話をしているので、普通だ。
フェンシングについて熱く語られながら
フェンシング用品を買いに行く湯手につきあう事にした。

一方その頃…
青下 空菜は病院から出てきた。
青下は友人の裏川が目の前で轢かれ
そして死んでしまったことで
かなりのショックを受けていた。
今日はせっかく大学のオープンキャンパス
いけると思っていたのに…
その時、目の前に背の高い人影が現れた。
それは青下の知っている顔だった。
「呂里混先生!」
それはかつて青下、裏川や愚怒羅が
通っていた幼稚園の先生であった
呂里混 文俊だった。
呂里混先生は47歳と結構高齢だが、
とてもいい先生だった覚えがある。
「やあ青下さん。久しぶりだね。」
その顔は笑っていた…ように一瞬見えたが
すぐに悲しそうな顔になった。
「裏川くんが…とても残念だったね。
出来ればこれからそのことについて話があるんだ。
そこの喫茶店にいかないかい?」
青下は呂里混先生を信頼していたので
「いいですよ」と答えた。

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優人と湯手がフェンシング用品の買い物を終えて
喫茶店で休んでいると、
青下と呂里混先生が店に入ってきた。
青下は重い表情だったが、
呂里混先生は少し笑っているように見えた。
優人は声をかけようかと悩んだが、
なにやらただならぬ雰囲気なので
見守っている事にした。
優人はこういう面白そうな事が大好きだった。
湯手はまだ二人に気付いていないようだ。
日常でも湯手は空気が読めない所があるので
仲のいい青下を見て声をかけてしまっては困る。
そこで湯手に興味のありそうな話を振ってごまかすことにした。
「そういえばフェンシング部の顧問の山崎先生って
どんなことを教えてくれるんだ?」
「それはねー、イャンクックのモノマネとか…」
「そ、それは…すごいな」
予想外の答えに聞かなければよかったと後悔した。
あの真面目そうな山崎先生が…いや、そうでもないが。
「あと、ランスの上手い使い方とか・・・」
「そこは太刀だろ!太刀にしとけ!」
優人は太刀厨だった。太刀以外の武器に興味はない。
「太刀は素晴らしいぞ、特にソロだと真価を・・・」
「でもランスだってなかなか・・・」
「君は何もわかっていない・・・」

しばらくして二人が喫茶店を出ようとしたので
優人は二人を尾けてみる事にした。
優しい優人は湯手の食事代も全て払ってあげた。
つまりは奢りだ。アルバイトなどをしているわけでないが、
ポケモン厳選をしてやったお礼で
たまに金をもらう事があるのだ。
よいこのみんなはこんなことをしてはいけません。
それでもここで払ってあげるのは優人の優しさが感じられる。
「私も尾けていきたいー!うひひ!」
と湯手が言ったので仕方なく連れて行くことにした…いひひ。
笑い方が移ってしまった・・・仕方ないね。いひひ。

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「あの・・・呂里混先生?」
人気のない所に連れて来られ、
青下はいくら信頼している
呂里混先生とはいえ少し不安になってきた。
この人怖い。キャー怖い。
「そろそろだな・・・」
口元に不気味な笑いを浮かべ、呂里混が言った。
次の瞬間、その辺りの物陰から
黒い覆面を被った人たちがわらわらとたくさん出てきた。
黒すぎて怖い。
わーらわら。わらりすと。
「ひょえっ!」
驚きすぎて青下は奇声をあげてしまった。
そして、唯一頼れる大人である呂里混を見あげてみるも・・・
「残念だけど、君にはここで捕まってもらうよ・・・」
そういって呂里混はその太くて筋肉質な腕を伸ばしてきた。
毎日鍛えてるらしい、ロリへの執念である。おそろしや。
そのとき呂里混は右腕に何かが突き刺さるような痛みを感じ、
瞬時に腕を引いた。
そして物凄く痛む腕を見ると、そこにはフェンシングの剣が突き刺さっていた。
「いひひーひっひっひ!!!」
そこには、ありえないほどの笑顔でフェンシングを振るう玉子がいた。
その顔はまさしく狂気に満ち、悪魔の如しであった。
呂里混の腕はかなりえぐれていた。
「い、痛い!これは痛い!ニーソを語尾につけるくらい痛い!」
呂里混の悲痛な野太い叫びが路地に響く。
「ふおおぉ…この程度のおっさん一人、
フェンシング部で毎日鍛えている私の敵ではないわ!」
勝ち誇る玉子。しかし黒い覆面を被った男たちが
玉子を取り囲み、わらわらしていた。
「まずい囲まれた!」
覆面の男たちは思ったよりたくさんいた。
いくら玉子が地区大会で優勝しているほどの腕前があるとはいえ、
複数との戦いはまったく慣れていなかった。
「ククク、私の部下はとても優秀だぞ」
呂里混が指を鳴らす。すると男たちのフォーメーションがするっと変わる。
その鮮やかさはもはや芸術だった。オリンピックで優勝できるかもしれない。
「いけ!お前達!そいつを捕らえろ!」
「いやーやめてーいやー」
玉子は捕らえられた。カゴにいれられた。
「これで残るはお前だけだ・・・」
青下は腰が抜けてしまい、逃げる事もできなかった。
捕らえられた。カゴにいれられた。
「お前ら!退却だ!」
覆面の男たちと呂里混は路地の奥に消えていった。わらわらと。わらりおん。

「・・・くっ遅かったか!」
優人がたどり着いたのは二人がさらわれてから30分後のことだった。

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